インフルエンザ抗わば
ここの所体調の悪い中年男性である事にかけては他の追随を許さないはずの私だが、日常生活においてそれ以上に状態の悪い人々に囲まれている日々に突入している。
そう、インフルエンザである。家族にも職場のおっさんにも絶賛蔓延中のインフルエンザ。最近の新聞報道なんかだと「インフル」と略されるあのインフルエンザである。 私もここ最近の体調不良により他者に同情されたい立場なのだが、なにゆえインフルエンザは破壊力が酷い。私以上に苦しそうな顔をしてゼーゼー喘いでいる方々が身の回りにゴロゴロ転がっているわけである。
よく耳にする病気だと思って簡単に馬鹿にしてはいけない。何せ第一次世界大戦が終結したのは世界中の何千万人もの人々がインフルエンザに罹病したからだとも言われている。凄まじき猛威をふるったのだろう。生半可なウィルス(懐かしい言い方をするとビールス)ではないのである。 あまりに感染力が強いので会社のおっさんには出勤お控え願いたい。全快して一週間は顔を出さないでくれても構わないところなのだが、人員不足に付きそうも行かないようだ。ギリギリの人数で運営されている部署というのはこういう不慮の事態が起こった時に困る。 愛しのぽちゃさんが発症してしまった場合は私の全ての思いを込めて看病に当たるのも吝(やぶさ)かではないが、会社のおっさんの場合は迷惑なだけである。 私は基本的に私が一番大事な人間なので、「ぽっちゃりした女性」「ふくよかな女の子」「かわいい熟ぽちゃさん」といった、何か特別な価値を持っている人種でもなければ「は?お前インフルエンザなの?オイオイこっち来んなよ」なんて具合に冷たくあしらってしまっても仕方があるまい。世の中そんなものである。 会社のおっさんなんてただそこにいるだけでも何となく不快なのに、感染症散布マシンと化して同じフロアにいられるとか正直大変困ってしまう。というか病人に無理をさせないぐらいの会社であって欲しいのだが、この不景気そうも行かないようだ。世知辛い世の中である。 私が大切だと思った君ならばその熱を我が肌で吸い尽くしてあげよう。 「君のためなら死ねる」というと思いっ切り嘘だが「君のためなら戦える」ぐらいの意志は持っているつもりだ。そんな私に惚れてくれる女性がいたらとても嬉しい。フフフ。 東京ドームで圧倒的不利の下馬評を覆しタイソンからTKOを奪い勝利したジェームス・ダグラスのように、男ROUNDABOUTをここぞとばかりに証明してみせよう。勿論一緒に感染してしまい仲良く病院送りという可能性もあるがその時はその時だ。だって、仕方がないじゃないですか。「会社休めてラッキー」なんて感じで受け止めればいいだろう。こういうのをポジティブシンキングという。参考にして欲しい。 インフルエンザにかからないならかからないでいう事はないが、どうせかかってしまったのならば私が君を抱きしめて守ってあげよう。だから逆の立場の時は君も出来れば「エーンガチョ」とか言わずに看病してくれたら嬉しい。 君がいて僕がいる。 助け合いの精神である。相互互助こそが円満な人間関係の基盤なのだ。 インフルエンザ如きに敗れ去るような脆い恋では悲し過ぎる。熱い情愛を体で語らい合いたいものだ。
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