PCの世紀
十数年前の話である。私は当時PCソフトの営業マンをやっていた。当時は企業などでも「わしはパソコンなんぞ絶対に触らん」と言い張るジジイが当たり前のように存在していたものだ。こういう輩は総じて頭が硬い。
阿Q正伝もとい老人(魯迅。なんちて)というのはそう言うものだ。女の子の乳なんかはいつまでも触りたがるくせにPCは何が何でも嫌なのだ。ベイブレードを買って貰えず泣き叫びながらもおもちゃ屋の店頭から一歩も動こうとしない困った小学生のように頑ななのである。
今なら会社のPCを操作する事を拒否するおっさんがいたら間違いなく業務拒否である。その場でクビを言い渡されても反発出来る立場にはない。仕事をしたくないと言っているのと同じ事なのだから当然だ。しかし当時はPCどころか業務上で携帯電話を持つ事すら拒む中年社員が大勢いた。今の子供たちには信じられない話かも知れないがほんの十数年前の話である。大勢いたのだ、いやマジで。 今、例えば会社面接で「PCが苦手で触りたくないんです」なんて言ったらパートですら採用などされっこない時代なのである。それでも稀に、未だにそういう事を口にする人々もごく僅かだが存在するのだが(しかも何故か彼らは開き直って誇らしげにそう宣言する事が多い。彼らの多くはPCは苦手だけど頑張って使います、とも言わない)...絶滅指定種であると言っても過言ではないだろう。 だがそんな一部の反抗分子を横目にコンピュータは日常生活になくてはならないものとなっている。どんなに触りたくないと訴える集団がいたとしても彼らの声は時代の波にかき消されていく。蟷螂の斧というやつだ。どんどんコンピュータを身近な存在と受け止める若者たちが溢れ出て、世の勢力図が塗り替えられていっているのだ。 たった十年で、かつてPCソフト会社社員だった私よりフツーにコンピュータに詳しい子供たちが大量に社会に出て来るようになってしまった。うーん恐ろしい、時の流れとは凄まじいものだ。AVデビュー以降どんどん肥大化していく七尾みつみの肉体ぐらい激しい勢いで膨張は続いている。まるでビッグバンだ。九州弁で言うとビッグバンのごつごたる。 時代は変わっていく。ララァに言われずとも人も変わる。 今の日本は既存のシステムにしがみつく年寄りを大事にして若者を棄民する世の中となっているので今一つ変革が目に見えた形となって顕れていないが、別に今の時代の若者が無能なわけではない。いずれは新しいシステムに適応した現在の若者たちが中心になる時代が訪れ、我々中年も老人と化し、メインストリウムから排斥されていく時代となるのだろう。 私などに出来る事と言えば弾かれないように何とか食らいつくのみである。「老人」とは年齢で決まるわけではない。多分に気持ちの持ち方の有り様だ。どうにかして老化を抑え、いつまでも瑞々しいナイスガイとしてぽちゃさんをGETしたく思う。 しかしながら老人がみんな時代の流れに取り残されているのかというと決してそう言うわけでもないようで、シニア層のPC普及率もなかなかであるようだ。二極化が進んでいるのだろう。そう言えば私の母もホームページ・ビルダーを駆使して自分の趣味のサイトを立ち上げた。ブログではない。HPである。うーむ恐るべしホームページ・ビルダー、あんな素人ですらサイトが作れるとは...正直かなりビックリである。 そんな中Yahoo!でこんな記事を見付けた。勝手に引用。
PCはシニアの必需品 60~70代の9割超がほぼ毎日利用
シニア世代にとってパソコンは必需品-。オンライン上でのデジタル写真集サービスを手がける 「デジブック」(東京都渋谷区)が60~79歳の男女を対象にしたインターネット調査(有効回答数800人)で、こんな傾向が浮かび上がった。 調査結果によると、パソコンの利用頻度について、93.5%が「ほぼ毎日」と回答した。パソコンやインターネットをこれから趣味にしたいと考えている人の利用頻度は96.1%とさらに高くなった。 パソコンで何を利用しているか聞いた質問(複数回答)では、情報検索サイトが79.8%でトップ。電子メール(77.1%)、ネットショッピング(68.6%)が続いた。 また、パソコンを使うことによる影響を聞いたところ、91.4%が「情報が得やすくなる」と回答。さらに5割以上が「知識が増える」「老化防止に役立つ」「趣味が広がる」と答え、パソコンを肯定的に評価しているシニア層が多いことが分かった。 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090925-00000553-san-soci
「ス、スゲエ。今やおじいちゃんおばあちゃんが当たり前のようにネットに接続する時代になったのか!」 と思ったがちょっと待てぃ。 何だよ"インターネット調査"って。インターネット上で調査したらPCに毎日触れているような層が大半になってしまうのは当たり前だろアホ。そんな統計信用出来るか! 実はこれ、産経新聞の記事である。朝日や毎日よりはマシかと思っていたがまあマスコミなんか所詮はこんなものだ。こうやってミスリードを誘っていつも記事を書いているのだろう。まあ、ひょっとしたらミスリードしているという自覚もないのかも知れないが......産経はやはり大手最下層二流マスコミの哀しさか、こういう頭の古いデスクが多い。 そんなわけで見出しはインチキというか詐欺というか無能丸出しだが、しかしそれでもこの800名という大勢のご老体軍団がアンケートに答えているように、毎日PCに触ってカチャカチャクリッしている老人がワンサと溢れる時代になったわけだ。 ぽちゃさんの乳首を執拗に弄り抜くが如く、PCを弄くり倒すのだ。 しかし同業者がPCを使えない事を指差して嘲笑っていたジミー鈴木が結果的に自分が一番PCを理解していなかったなんて言うパラドックスも世の中には存在する。今パソコンを弄れる連中が本当にこれからの日本を背負っていく人材なのかという確証は実の所ない。これは難しい話をしようというわけではなく、結局コンピュータは「道具」に過ぎないから、道具に振り回されるのではなくその道具を使って何をしようとするのか、という思考が必要だ。結局世の中の流れがコンピュータ社会に移行していても、それに乗っているだけでは楽しい未来は約束されはしないのですよと認識せねばなるまい。 さて私は自分の中にパソコンよりも大切なものを持っている。問題はそっちだ。如何にして愛しいぽちゃさんを己がものにするか。真の人生目的はブレなく舵を持って行きたい。 道具は所詮道具だが道具一つ使えないと置いて行かれる現代社会。全く大変である。しかし現時点で満足したり思考を止めてしまったら、私が今毛嫌いしている老人たちと同じになってしまう。藤本義一じゃあるまいし、パソコンを触らない事を自慢にしているような下らないオッサンになりたくはないのだ。 中年には中年の矜恃がある。しかし自分の意見しか持たないやつは大概阿呆だ。そこん所間違えない程度には、流行り廃りについて行く必要はあるのだろう。 果たして老人と魯迅をかけたダジャレを書いて満足しているような私に未来があるか否か。そこはわからない。しかしながら何とかして幸福な未来を手繰り寄せたいものである。 幸福は貰った。私の未来も、これからだ。
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