五兆八千四百億円の咆哮
大統領の座をを辞任、と言うか毟り取られたエジプトのムバラク前大統領の健康が悪化しているらしい。先の十二日にはスイス政府によって全財産を凍結させられる事が決定したばかりだ。ちなみに資産総額は七百億ドル。日本円にすると約五兆八千四百億円である。 5,840,000,000,000円。大金だ。ゴルゴ13の如くスイスの銀行に貯め込んだこの膨大な資産を「元大統領やその家族、側近らによるエジプト国家固有資産の横領を防ぐため」と言う理由によって最大三年間凍結させられてしまったわけだ。そりゃあ病状も悪化するだろう。考えてもみて欲しい、君が一億円貯金しているとして国に全部凍結させられてしまったらどう思う?恐らく死にたくなるはずだ。
五兆八千四百億円と言えば一億円の五万八千四百万倍分である。 ちなみに総務省の資料によると平成二十一年における広島県三次市の人口がだいたい老若男女総合して同じくらい(58,416人)なので、いきなり中国地方の一都市に暮らす人々全員が億万長者になったと思えばいい。それぐらいの大金である。 それがあなた、全財産凍結だ。ムバラクも死にたくなって当然と言える。これで逆に健康的に元気になれる奴はいないだろう。 またこれはどうでもいいが三次市は「みつぐし」だとずっと思っていたが「みよしし」だった。私はこれを高校生の時に覚えたはずなのだがそれからすっかり忘れてしまっていたようだ。人間の記憶なんて曖昧なものである。 さて独裁者と言えば二種類あって、所謂金正日タイプの超絶成金タイプと、権欲はあれど物欲はそうでもない、質素な生活を好むマジモン思想家タイプである。世界中殆どの独裁者は前者であるが稀に後者タイプもいて、代表的なところではキューバのカストロ、韓国の朴正煕、リビアのカダフィ辺りが上げられる。朴正煕は暗殺されてしまったが今でも彼を懐かしむ者は多く、カダフィなどは今も国民人気は高い。 カストロも第一線を引いて普通に暮らしている。途上国の独裁者は権力の座から下りると殺されたり軟禁されたり逮捕されたりとロクな余生を過ごせないものだが、質素に暮らし異常な規模の財産を残さない程度の生活であれば引退後は命までは狙われないわけである。しかし名誉のみならず富を欲し、権力を欲する事だけを第一目的にで他者を支配下に置いて来た独裁者の凋落は厳しいものだ。 過ぎたるはなお及ばざるが如し、と言う。東洋の故事をムバラクが知っているならば、その意味を噛み締めて心の底から実感している事だろう。 金持ちは滅びよと言うのは世の多くの人類の嘘偽りのない本当の気持ち、即ち本音である。当然私もそうだ。溢れ返るお肉を持つ女体と違ってぶくぶく醜く肥え太った犠牲者などこの世では必要とされない。 だがやはり問題はムバラクを追放したところでエジプトの諸問題が解決するわけではないと言うところだ。麻生政権にNOを叩き付けたらもっと馬鹿が首領の座に就き、その馬鹿も追い出したらどうしようもない無能が選ばれてしまった国もある。国政は難しい。 五兆八千四百億円あればどれだけの人々を幸せに出来たか、今はもう虚しい数字である。 必要とされない人間は滅びる。私はぽちゃさんをいつまでも必要として生きたい。
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