自粛
我が社の立体駐車場が真っ暗なのである。震災以降続く自粛ムードのためだ。原発停止が続き電力が足りないから冷房も28度に設定しろというお達しが来て、意外とみんな律儀に守っているのである。
「私ぽっちゃりしているからすぐ汗だくになるの。だからうちの部署はエアコン19度にして欲しいナ♪」とはいかない。ある意味平等だ。乳とお腹の肉の間に氷を巻いたタオルを挟むなど、自己防衛に励むしかない。みんなはひとりのために、ひとりはみんなのために。オールフォーワン、ワンフォーオールと言うが、エアコンに関しては「お前一人のために規律を破れるか、バカモノが」なのである。
と言っても我が部署の場合は余りにも暑いので朝五分間だけ禁を破り23度に一気に冷え込ませ、その後エアコンをドライに切り替えるというテクで乗り切っている。正直ドライだろうが28度設定冷房だろうが対して消費電力は変わらないような気もするのだが気にしない(一応ドライの方が消費が少ないらしいが)。しかし大半の部署ではちゃんと言われた通り28度に設定したり、ドライどころか「送風」でしていらっしゃるのだ。こう言うところは日本人は本当に偉いと思う。 だが例えば我が社への訪問者が「駐車場の電気、点いてますね」といちいち忠告してくるのは正直どうだろう。 「あんたら節電の意識ないの?」とか言ってくる輩もいる。 節電したい気持ちは山々ではあるが、真っ暗になるので危ないから灯けているのである。 一応口では「そうですね、確かに電気代が勿体無いかも知れませんねえ」とは答えているものの、事故や労災が起きた時に責任を取るのは訪問して来られる方々ではなく弊社の方である。正直「余計なお世話だ」と言いたくなる。 自粛はわかるが、自粛の強制はあんまり美しくない。 節電以外にも「花火大会で騒ぐのは不謹慎だから自粛」みたいな風潮もあった。こういう我慢ヂカラは日本人の美徳だが、押し付けも多々あるのが同時に欠点である。花火ぐらい打ち上げさせろと訴えたい。 「あまり体重が多いのは良くない。適正体重というものがある」 全く以て大きなお世話だ。女性は大きく、太く育つべきであると私は常々口にしてきた。そんな自粛論に負けてたまるかなのだ。 もっともそれでも、春先あれ程世間を賑わせた自粛ムードも最近はかなり下火である。人々は移ろいやすい。自粛に飽きて来たのかも知れない。 最近耳にした自粛というと「ゲーム販売店、ニンテンドー3D販売を自粛」ぐらいであろうか。 まあいきなり一万円も値下げすると発表され、しかも値引き開始日まで二週間ぐらいあると聞かされたら、「その二週間の間に売ったお客様からクレームが来る」と考えてしまうのも無理はあるまい。これは仕方のない自粛とカウントしてあげるべきだろう。 かように例外もあるが、それでも私としてはぽちゃさんまで肉を自粛する必要はないと強く訴えたい。 自粛にも正しい自粛とそうでもない自粛がある。 何を削り、何を残すべきか? 大切な判断を、間違える大人になってはいけない。
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