ロッテリアの怪
不思議な事が起こったのである。チーズバーガーを頼んだはずが来たのはハンバーガーだったのだ。これはミステリーだ。
とあるロッテリア。私と連れが並んだ列の先にいたのは、笑顔のまぶしい女性店員だった。 「肉厚ハンバーグサンド・チーズのMセットを下さい。ドリンクはウーロン茶で」これは私だ。 「はい」これは店員。 「私も同じものを下さい」これはつMA...ゴホン、連れ。 「はい」「あっ、私は単品でジューシーチキンを追加して下さい」「はい」
常識で考えれば運ばれてくるのは肉厚ハンバーグサンド(チーズ)が二つとポテト二つ、ウーロン茶が二つ、そして一つのジューシーチキンのはずだ。私は文系だが、数学的に間違っていないはずだ。しかし来たのは肉厚ハンバーグサンドと肉厚ハンバーグサンド(チーズ)が一つずつだった。他の注文品は計算通りに運ばれて来たが、この二つは明らかにおかしい。 森三中が来ると言うからイベントのチケットを買ったのに行ってみたらモリマンのライブだったら皆様どお思われるだろうか。森三中すら相手にならない下品具合である。きっと小さなお子様を連れたお父様お母様方は怒り狂うだろう。まあ、森三中の芸風もとても上品とは言えないが。 「GT-R買ってやるよ」とお客様に呼ばれ喜び勇んで自宅まで訪ねてみたのに「やっぱこれからも今乗ってるモコにするわ。車検の手続きよろしく」なんてほざかれたら夜中に玄関先で立ち小便を食らわせたとしても誰もこの日産セールスマンを咎めは出来まい。 肉厚チーズを二つ頼んだのに来たのは通常の肉厚バーガーと肉厚チーズが一つずつ。 正直に言おう、私は意味が分からなかった。理解出来なかった。しかしどこからかふつふつと黒い感情が押し寄せて、私の魂を薙ぎ払った。襲い来る理不尽を君はただ黙って受け入れるのか、それとも己が信念に従って抗うか。君はどうする、君はどうするか、君は。 私は当然闘う事を選択したのだ。だって、男の子ですもの。大きな乳を持つぽちゃさんと仲良くなれれば最終的には一度でいいからその乳に触れさせてくれと嘆願する時もあるだろう。男にはチャレンジスピリッツが必要な瞬間がある。それが正に、その刹那だった。 「アノー、チーズバーガーを二つ頼んだんですけど」 「はい!お連れ様の分は、通常セットに単品でチキンを付けるよりチキンBOXセットにした方がお値段が安くなるのでそうさせて頂きました」 「それはいいんですがチーズバーガーがハンバーガーになった理由は何故ですか?」 「チキンBOXセットには肉厚ハンバーグサンドのチキンBOXセットはありますが肉厚ハンバーグサンド(チーズ)のチキンBOXセットはありませんのでチーズ抜きの肉厚ハンバーグサンドになります」 「えーと、私たちそんなの頼んでませんけど」 「...少々お待ち下さいませ」 そう言って笑顔のまぶしい彼女は消えた。三分後、上司らしき女性店員が出て来た。若い。ピチピチだ。ただし笑顔は強張っている。 「お客様、先の者は、通常の肉厚セットにチキンを一本単品で加えるよりも、チキンBOXのセットの方が安くなるのでそのように会計させて頂きました」 「それはわかりましたが肉厚ハンバーグサンド・チーズはどうなったのですか?」 「チキンBOXにはチーズのセットはございませんのでお付け出来ません」 もう駄目だ。そこが私の限界だった。 「要するにあんた方が注文間違えた上に勝手にセットを変更したんだろうが」 つべこべつべこべと、なぜ素直にごめんなさいと言えんのだ!私の中のウォン・リーがそう絶叫したのだ。この風景を遠くから見ていた連れ(一足先に席を取りに店内に入っていたのであった)は後にこう語った。 「店員さん震えていたよ。余程怖かったんじゃない?」 俺が悪いのかよ!しかし遠目にはちょっと小型の関取がうら若き女性店員に因縁を吹っかけている姿に見えたに違いない。世の中はこういう時男に不利に出来ている。チクショーなのだ。英語で言うとガッデム。しかしこんな理不尽を黙認していては男が廃る。と言うか悔しい。悔し過ぎる。バーチャ2で待ってるだけのサラに瞬殺コンボを食らうしかない時ぐらい悔しい。 私はこれからずっとアンチロッテリアを貫くであろう。2ちゃんねるでロッテリアのスレがあれば荒らしの如くバッシングに走るかも知れない。それもこれも全部この二人の店員が悪い。 思えば二人とも若くて客商売らしく小ざっぱりと綺麗な格好で一見好感が持てる印象を与えていたが、両人ともぽちゃさんではなかった。全く、全然、痩せていた。みすぼらしく痩せていた。やっぱりガリは駄目だ。女はぽちゃさんに限る。そう痛感した次第である。 怒る 怒る 東芝。女体はやはり、豊満に限る。 この憤り、消えはしない。
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