新時代を生きる
「映画に出てくれ?私はプロの俳優だよ。観客もいないカメラの前なんぞで演技などできるか。そんなものは演技などではない。演劇舐めんなコノヤロウ」
真夏の炎天下、街路の端っこに立ってブツブツ呟いている変な人ではない。百年前ほどの前の職業俳優の台詞である。彼の頭の中の演劇とは舞台演劇に他ならず、それ以外の演劇は全く受け入れられぬ概念だったのだろう。またきっとこう言う人は、例え映画に出たとしても、舞台俳優的な大げさな演技しか出来ず、オーバーな大根役者として観客に笑われてしまう姿しかフィルムに残せなかったに違いない。映像は残酷だ。その意味では彼らは映画に出演せず舞台に殉じた選択は間違っていなかったと言えるだろう。
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