パヤオの叫び
和歌山沖の太平洋上、紀南沖に「パヤオ」と呼ばれる浮き魚礁(中層型)を設置したところ、その海域の漁獲量が結構な割合で増えているのだそうだ。
パヤオと言ってもロリコンの気があると根強く噂されているどこかの都道府県みたいな名前のアニメ監督の事ではない。要するに魚をおびき寄せるためのブイである。 そのブイを海面下に沈めるのだ(通常は海面に出ているケースが多い)。お魚さんは浮遊物に近寄ってくる習性があるので、たくさんの魚が近寄って来るチャンスを見計らい、一気に漁獲高アップを狙うという作戦である。沿岸部から離れているのでパヤオを沈める事により、海中の大きな範囲の魚群をまとめてごっそり釣り上げようという魂胆だろう。
パヤオ自身の大きさはそんなに大した事はない。長さ10メートル未満、直径2メートル未満と言ったところで、錘(おもり)を付けて水面下数10メートルの位置に固定するんである。出来る男と同じで大きく構える必要はない。無理に大きく構えなくても実力さえしっかりしていれば周囲は認めてくれるものだ。 で、ぶっちゃけ魚の気持ちもわかる。私も身長150センチ、体重80キロ、Jカップ28歳ぐらいの豊満女体が街中で佇んでいれば回遊魚の如く近くに寄ってしまうだろう。本能とは抗えぬ行動原理を示すものである。例えるならば異国の地、農協の旗下に集うツアー参加者。もっと言えば北朝鮮ツアーガイドに寄り添う日本人旅行者と言ったところか。何せ北の場合ガイドから離れたり迷子になったら自分がどうなってしまうのかわからないのだから離れるはずがない。私も同じだ。ぽちゃさんがいたら傍に寄らずにはいられない。パプテマス・シロッコは木星の重力圏を畏怖したが、私もぽっちゃり女性という重力の井戸に取り憑かれてしまった。 魚もどういう思考回路を経てそう言う結論に達したかはわからないが、とにかく海中にゆらゆら蠢くパヤオの魅力にメロメロなのだ。 そこを狙って一本釣りである。鰹、鮪、シイラ辺りが獲れるそうだ。特にシイラは浮遊物の影に集まる事で有名で、正に待ってましたと言わんばかりにパヤオに寄ってくるらしい。飛んで火に入る夏の虫、「俺を釣って下さい」と哀願しているかのようである。海の民足る漁師たちはこうしてバカスカ漁獲に励むのであった。 漁法はケンケン漁である。疑似餌をくくりつけた板(潜行板)を揺らめかせ鮪らを釣り上げる方法だ。これが鰹辺りには非常に有効らしい。 まあ無理もない。例えば私にもどうしても食いついてしまう餌がある。 *現金 *超力ロボガラットDVDメモリアルBOX *横浜ベイスターズシーズンチケット *東芝製512ギガバイトSSD *青木りんの家の鍵 *イー・モバイル社、デュアル・ダイヤモンド(S22HT) *ウォークマンNW-X1060 *カマグラ *松本猛・著「すてきな青春」の単行本化されなかった分の漫画原稿 煮干しの味を覚えてしまったわんちゃんみたいなものである。目の前にあれば食いつかずにはいられない。そんなわけで私はパヤオに魅入られ近寄って、疑似餌にあっさり引っ掛かってしまう魚の気持ちが大変やっぱり良くわかる。 しかしどうせならパヤオに釣られて寄ってくる間抜けな魚さんではなくて、私自身がパヤオになりたいものだ。ぽちゃさんが次々と寄ってくる男らしいパヤオ自身、そのものに。 海の中で目立たずともただ存在しているだけで己を求めてたくさんのぽちゃさんが寄ってくるパヤオになる...素晴らしい、素敵過ぎる。目指すべき目標はそこだ。 釣り上げた鰹は秋が旬だ(本当は脂の乗っていないかわりに身の引き締まった春鰹の方が食通には好まれるらしいがそんなの知った事ではない。私は魚も女体も脂肪分が好きな男である。)。私も是非ともぽちゃさんを釣り上げる立場の方の人間となりたく思う。 私はパヤオになりたい。ただそこに在るだけで、周囲に人を惹き付けるパヤオそのものに。 そして最終的に漁師としてぽちゃさんを釣り上げる事が私の目的である。パヤオ兼漁師、設定に多少無理がある感じもするが気にしない。 勝てば官軍だ。 多少の設定の破綻は問題とされない。世の中とはそんなものだ。 「勝利の栄光を、俺に」 ぽっちゃり界のシャア・アズナブルとして、ガルマに忠誠を誓おうではないか。 パヤオになる。私の目標は決まった。 たくさんの女性を夢中にさせるパヤオになるのだ。 この私の願い、叶う事を祈るばかりなのである。
|