北の湖、舞う
日本相撲協会理事選挙が行われ、満場一致で北の湖親方が理事長に返り咲いた。北の湖敏満。その名の如く、満を持しての再登板である。敏く、残りの人生を相撲改革に懸ける勢いであろう。
だがしかしである。そうは言っても、この数年表面化が続いた不祥事の連発で(元々大して高くなかったけど)協会の信用は地の底まで失墜したわけで、その代表的な旧勢力の首領格として見られていた北の湖の復活は厳しい目で見られている状況にある。
んだが、経験とリーダーシップは万人に認められたものがあり、本気の本気で改革に当たる覚悟が本当にあるのなら、適任とも言える。Kカップ超の乳と同じで、その存在力は絶対だ。公益財団法人以降へ向け待ったなしの状況である。北の湖の力が必要なのだ、と言う事だろう。 さて協会は昨年の八百長問題で大きな痛手を被ったが、成功しているかどうかは別として、被害を最小限に納める方策を取った。メールで足のついた八百長騒動以前(平成二十三年以前)の八百長の存在を改めて否定、「なかった事」として処理したのだ。そんなわけはねえだろう、やってたに決まってるやん!今回責任を取らされた力士たちがかわいそうじゃん!としか言い様がないが、大人の世界は卑怯で下らないタブーに満ちている。彼らは犠牲になったのだ。 さて今回の理事選、理事長としてある程度リーダーシップが取れる事がわかっている北の湖以外にも、大麻問題や八百長問題で退いた理事が次々と復職した。新任の八角親方にしても八百長問題で役員待遇辞任した事は記憶に新しい。一年経ったら「もう、無しヨ」という話になってしまったのだろうか。それはそれで不可解だ。 だいたいこう言っては何だが元千代の富士の九重親方なんて好角家の皆様方からも八百長の総本山みたいな扱いをされていた大力士である。しょうがないじゃん、やってたんだから。八百長問題では、親方のみならず、白鵬や魁皇みたいな大物も追求が早々に打ち切られてシロの判定を下された。魁皇が八百長と無縁だったなんて素直に信じられるお人好しで人の世が乗り越えられるかと言う話である。ぽっちゃりデリヘルを利用して「呼び出したデリヘル嬢とトランプしていただけ」と言い張るようなものだ。 昭和二十九年、「これから八百長は止めさせる」と力道山が口にして素直に「こんな大騒動になったのだからまさか今後八百長は止めるだろう」と国民の皆様信じてあげた時代ではない。もっともガチンコで成り立つ相撲とプロレスの違いはあるが、状況は似たものがある。懐疑の目は根深い。 まあ帝国軍、東電や民主党、オリンパスと同じで、責任の所在を明確にせず枝葉を切り捨て先に進むのが日本人の特性である。改革すると言っているのならば見届けてあげようではないか。失敗しても政治や原発みたいにみんな困るわけではない。 しかしながら大相撲の世界は常識が通用しない事にかけては天下一品である。潔癖で知られた放駒前理事長がどうにか頑張って持ちこたえさせた土台をぶち壊すなんてある意味簡単だ。 親方衆なんて、人生で相撲しか取らず、ただ昔強かった関取と言うだけで構成されている方々だ。不祥事連発でも大勢の親方が当事者意識もなく、何が問題かもよく理解出来ずに、口を開けて何とかなるだろうとただポカンとしていた。 「NHKが放送してくれなくなったら、自前のテレビ局を持てば良いのではなかろうか」 これはまだ十年ぐらいしか生きていない小学生の発言ではなく、いい年こいた複数の親方の発言である。仕方がない。彼らは相撲を取る事しか求められていない人種だったのだから。仕方がない。だが外部の介入を拒み、人様の子供を預かり国から助成金の出る財団法人のままでこれからもそのまま存続していけると思っていたら間違いだ。 「ハミィはちょっと用事が出来たのニャ」 スイートプリキュアでは、バカでも正しい心を持っていれば人は世界を守り続けていけると示したが、そうそう現実社会はアニメみたいに上手く事は運ばない。レッキングクルーで自分の落としたドラム缶に閉じ込められてプレイヤーがリセットボタンを押すのをただひたすら待っているだけのマリオのような未来が待っているわけだ。 女の子のぽちゃさんは素敵な王子様が現れるのを待っていればたまたま幸せが向こうから転がり込む可能性も無きにしも非ずだが、男のぽちゃさんは受け身では人生非常に厳しい。 「おまえたち 人間であることをやめたのか!?」 バイオレンスジャックに出てきたようなアクティブ過ぎる元お相撲さんも困りものだが、思考を放棄して鼻糞ほじっているだけみたいな元お相撲さんではただ腹の突き出た肉付きの良すぎる駄目中年だ。そんな奴らは私たちのヒーローだった関取衆ではない。 改革するすると口ではいいながら全く何も成し得ていない貴乃花親方を見てもわかるように、人間心の底で本当にこのままでいけないと思っていても実行に移す事は中々難しい。不祥事で一度理事長の座を降りた自身に対する批判の声があるがとの質問に対し「私は聞いていない。皆の推薦を受けたので仕事を全うして行く」と言い切った北の湖の胆力、気概に期待する向きも大きい。逆に角界絶対最優先、文科省対立上等の強気姿勢に対して懸念の声もあろう。 待ったなしなのだ。伝説的な強さを誇った大横綱であり、親方としても異様な迫力に満ちている北の湖敏満。氏の一挙一動に、注視せざるを得ない。
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