Hit the Road Ichiro
さて、我が家に迎えたセキセイインコちゃんの事で頭がいっぱいである今の私にとってどうでも良いといえばどうでも良いニュースなのだが、MLBのイチロー選手がシアトル・マリナーズからニューヨーク・ヤンキースへ移籍した。愛すべきセキセイインコの一羽もいない庶民の皆様方諸君にとっては大ニュースであろう。旅立てイチロー、なのだ。
思うに、シアトル・マリナーズと言うのは日本でいうと横浜DeNAベイスターズみたいなもんである。一応メジャーリーグ球団だがメジャーリーグ球団とは言えない。かなり言えない。勿論確かに間違いなくメジャーリーグ球団なのだが、非常にAAAレベルに近いというか、プロチームを名乗るに相応しくないというか、要するにベイスターズみたいなものである。
例えば中国は一応共産主義国だし北朝鮮は一応民主主義国家である。東京電力はエリートの集う大企業だ。だがしかしどう考えてもそんなの腑に落ちない。たまに2ちゃんねるのピザデブスレッドにどう見ても大して太くないガリガリのキモ女が「私って太りすぎて困っちゃってるんですぅー」とかほざきながら居座る事があるが、同じような違和感を感じる。つまりマリナーズは非常に糞球団であるという事だ。特に異論は皆さんないのではなかろうか。 しかしタンパベイ・デビルレイズ亡き後レイズへと生まれ変わり糞球団グループからタンパベイの五文字が消え去った今アメリカンリーグを代表する糞球団がマリナーズだとしたらナショナルリーグを代表する事間違いない糞球団であるピッツバーグ・パイレーツが現在ナ・リーグ中部地区で首位争いを演じているように、マリナーズが今後突然奇跡的に素晴らしい球団に生まれ変わる可能性だってないとは言えない。ベイスターズが優勝する可能性ぐらいないとは言えないわけである。 イチローはそんな糞球団を見捨てたわけである。もっともイチロー自身もこの二年の個人成績低下はすさまじく、親会社である任天堂との結びつきを背景に球団監督、果てはGMよりも立場の強いチームの権力者として振る舞ってきた彼に対する風当たりも相当強くなっていたに違いない。かつてサミー・ソーサがシカゴ・カブスを去った後、残されたチームメイトが嬉々としてクラブハウスに残されていたソーサの所有物、備品(ラジカセ)を叩き壊して喜んでいたと言う微笑ましいニュースが流れていたが、似たような立場にいた事は想像に難くない。 弱肉強食の世界である。フェリックス・ヘルナンデス辺り、最早イチローなど歯牙にもかけていないのではなかろうか。 ヒットを打つという技術力で事態が打破できなくなった現在、ヤンキースと言う頂点を目指す事が可能な球団に身を任せ、わずかな再生の可能性に賭けたい、まだイチロー自身商品価値が残っている今、今こそが、最大最後のチャンスなのだと思ったのだろう。イチローの決断は遂行された。自分自身の意思でチームを選択出来るだけの権力が残されている今この時を逃したら、自分は一介の元スター選手で終わってしまうとわかっていたのだろう。イチローは、挑戦したのだ。 一期一会はそうはない。街中で擦れ違った乳サイズLカップに迫るであろうぽちゃさんを発見した時に声をかけられるかかけられないか、イチローは間違いなくかけられる人間なのだ。しかしナンパが成功するか否かはまた別の話である。鼻であしらわれ、撃沈するかもしれない。だが声をかけねばその後再開できる可能性など誰も保証してくれない。 イチローとシアトルの関係はまさしく一期一会だった。今回の移籍があれどなかれど関係なく51は永久欠番になるだろう。しかしもうイチローはシアトルの住人ではない。自ら決めたのだ。 イチローはシアトルを去った。シアトルのファンはスタンディング・オベーションでイチローを称え、その決断を祝福した。イチローに万雷の拍手を浴びせてくれるMLBのファンは、現段階の糞球団であるマリナーズのファンだけである。 未来、マリナーズが弱小の汚名を晴らしポストシーズンへ、そしてワールドシリーズへ駒を進める時代が来た時に、イチローを覚えてくれているファンがどれだけいるのかはわからない。 決断するとはそういう事だ。 イチローの冒険が、まだ始まったばかりである事を切に願おう。可能性は、走り始めたものにしか与えられる事はないのだから。
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