くろのくんすきすき
久し振りに漫画喫茶に行ってきたのである。目的は「GANTZ」(ガンツ)のコミックスを読むためだ。ちなみにGANTZとは2000年6月から週刊ヤングジャンプで連載されている奥浩哉作の漫画である。
とても面白い漫画だが、観ていると非常にイライラするのである。なぜイライラするのか?というと、とにかく展開が遅いのだ。いつまで経っても話が先に進まない。 しかも休載が多い。そしてその遅筆のために現在では隔週掲載となっている。私は自他共に認めるイラチなので、こういうグズグズした展開の作品は本来好きになれない。しかしGANTZの場合、面白い。非常に面白い作品である。それ故に先が見たくてたまらないのだが、見てもちっともお話が進まず「つづく」となる事が殆どで、本気で脳が破裂するまでにムカツキを覚える事が多いのが現実である。
うじうじしているぽちゃさんみたいなものだろうか。決断力のない女性は見ていて非常にイライラするものだが、ぽちゃさんだからかわいい。かわいいが脳天チョップを噛ましたくなる。しかしかわいい。大いなるジレンマと言えるだろう。 同じようなパターンの作品として週刊少年マガジンの「はじめの一歩」なんかも挙げられる。内容を引き延ばして引き延ばして薄っぺらなエピソードを続けているうちにとてもつまらない作品になってしまったというのは言い過ぎだろうか。もう何を書いても「まだやってるんですか(笑)」と一笑に付すのみな感じである。「あぶさん」と同じような醜態だ。名作が腐っていく姿を見るのは悲しいものだ。 「ギャンブルレーサー」や「アグネス仮面」のように、内容がグダグダになったところで素直に連載打ち切りにしてあげればいいものを、大ヒット作ともなるとそうも行かずズルズル続いてしまいものなのだ。「こち亀」なんかもそうですね。見ててかわいそうな気分になってくる。 これがかわいそうな境遇のぽちゃさんだったら「私が慰めてあげよう」という事でたくさん抱いてあげるのだが、漫画は所詮漫画である。面白くなくなってきたり飽きてきたら読まなくなってポイなのだ。 井上雄彦の「バガボンド」も同じ理由でめっきり読まなくなった。 こちらもGANTZ同様絵を細かく描きすぎて筆が進まず週刊連載に追いつかなくなり隔週連載になったという似た展開の作品である。「カイジ」もあんなに面白かったのに、もう続編が出たとしても読まなくてもいいやという気分で一杯である。 現実に存在する女体と異なり、漫画は結局フィクションに過ぎないから、余程好きな作品でもない限りいくら読んでも進まないものを読み続けて耐えられる程私も気の長い人間ではない。むしろ短い。かなり短い男である。百年経っても終わりそうにない「ガラスの仮面」や「風雲児たち」ぐらいのレベルまで到達すればもう私たちも諦めるしかないが、引き際を誤った作品が迷走して続く様を見るのは結構辛いものがある。名作と呼ばれる作品なら尚更だ。 そんなわけで「GANTZ」だが、微妙である。明らかに広げ過ぎた風呂敷を畳めず(というか次から次に新たなる謎が生まれて、どの謎も殆ど物語内で解決や判明に至らず放置)、時間稼ぎをしている作品ぽい感じなのだが、単行本でまとめて読むと面白い。 よって私は二年程前に決めたのである。 「もうヤンジャンで追い掛けて読むのは止めて、二、三年に一度漫画喫茶でまとめて読もう」と。 そんなわけで中二年以上のブランクを経て久し振りに読んだわけなのだが、非常に面白かった。やっぱり面白い作品なのだ。 だが二年以上前に読んでいた時点では「大阪編」に突入する手前の時点だったのだが、単行本を読んでみたらまだその大阪編が終わってないでやんの。思わず漫画喫茶内にあった先週のヤンジャンをめくってみたらようやく大阪編バトルが終わって主人公の玄野が再生されているところだった(大阪編に入る前に主人公は倒されている。前回読んだのはこの辺りまで)。一体何なのでしょうかこのノロマな展開は。 ふと考えてしまうのである。私や作者が死ぬまでに完結するのだろうかと。 多分十年経ってもダラダラ続いているか、逆に途中で呆気ない打ち切りの結末を迎えている可能性が非常に高いと思う。そう思うとちょっと空しいな。ストーリー漫画の醍醐味は最終回に続く盛り上がりとその物語の終わらせ方にあると思うのだけど、そこがグダグダになるとどんな名作でも色褪せてしまう。「ずっと読んできたけど、今思うと読まなくても良かったなあ」なんて思ってしまう私である。空し過ぎるではないか。昔の映画「首都消失」みたいに、盛り上げるだけ盛り上げといて何にも起こらないうちに「終わり」というのは見ていてキツイものがある。映画なら二時間無駄にするだけで済むが、十年二十年三十年掛けた漫画作品がそんな感じで終わったり未完だったりしたら阿呆らしい。 GANTZもそんな作品で終わりそうな気配がある。単行本で数年に一度まとめ読みすればいいやという選択をしたのはそれが理由だ。 それでもGANTZはまだいい。私としてはまだまだ「続きを知りたい」と思える作品だからだ。 先にも書いたが、同じように雑誌で読むのを止めた井上雄彦の「バガボンド」なんて本当に大好きな作品だったのに今や単行本でも読む気がしなくなった(同じ作者の「リアル」は読んでいるけど)。前は単行本はおろか欧州旅行でイタリア語版をも買って揃えていた程はまっていたけど、今じゃ立ち読みすらしていませんよ、ええ。 現実社会で出会い、愛しさで温め会えるぽちゃさんと違って漫画は所詮フィクション、創造、想像の産物なのだ。「人気作品だから物語作りを長引かせている」と感じてしまったら熱もサーッと冷めてしまう。出版社の皆様も、そんな作り方をしてはいないだろうか。してるよね、うん。 GANTZとも読者として8年以上の付き合いになる。どうせ作り物の世界でも、せっかくなら最後まで騙し続けて貰いたく思う。 冷めた二人の愛を無理矢理続けても幸せにはならないように、心の離れた作品はそこで終わってしまう。 「この先どうなるのだろう」とワクワクさせるだけじゃなくて、たまには今まで張った伏線の一つ二つでも落としてくれないと読んでいる側も「この先どうなってもどうでもいいや」なんて考え出してしまいますよ。物語を盛り上げる能力が凄いのはわかったから、たまにはまとめる能力も発揮して下さいよ、奥先生。と、偉そうに伝えたく思う今日の私なのだった。 私のブログもそうだが「まだ続けているのかよ」とか思われたら寂しいではないか。なあ。
ところで最後に一つ気になる事がある。このGANTZの作者は大の巨乳爆乳マニアで有名で素晴らしい乳を描く才能の持ち主なのだが、ぽっちゃりかわいい登場人物を描いた事が一度もないのではなかろうか。それはないだろうと訴えたい。氏の心にはぽちゃさんの魅力が届いていないのだろうか。だとしたら日本未来の損失である。あんなに絵が上手い人が肉汁むせかえるぽちゃさんを描いてくれたらとても素晴らしいと思うのだ。 「世の中は乳だけではないですよ」とアドバイスしたい。 是非とも目覚めて欲しいと切に願う次第である。
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