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金も愛も
師走が近付くと段々仕事も忙しくなってくる。給料が他の月より多くなるわけでもないのに難儀な季節だ。全く持って面倒な話である。どんどん寒くなっていくのだから愛しのぽちゃさんとお部屋でゴロゴロまったりと過ごしたいものである。
しかも私の場合職業上正月休みがない。この十年来正月無しの生活を続けているわけで、年末が忙しかったのに年始は楽にならないという、中々困ったな生活を送っている。一度だけ無職（というかアルバイト）期間があってその時は正月を家でゆっくり過ごしたが、何分無職故にのんびりしていられる気分でもない。
正月休みを取れたら取れたらでソワソワする。人生とはどうにも上手くいかないものなのだ。
何が言いたいかというと、金があれば無職だろうが何だろうが気にならないという話である。
 個人的には海外の大型くじにでも当たって仕事をせずに一生優雅な生活を送りたい。それが私の願いである。年末ジャンボでもいい。しかしそんな都合の良い幸運はそうそう訪れるものではない。こうなると宝くじに当たるために常日頃の努力が必要となる。
しかし冷静に考えると、宝くじは努力して当選するものではない。考えて考えて考え抜けば一等が当たるというのならチャレンジの甲斐はあるだろうが、常識的に考えても何をどう努力しても宝くじの当選確率が上がるものではない。
同じ努力なら、ぽちゃさんを探す努力をした方が全然マシである。
それに三億円当たって小金持ちの人生と、ぽちゃさん一人をGETして共に歩む人生と天秤にかけた場合、後者の方が幸せに決まっている。ああ、決まっているとも、断言して見せようではないか。ちょっぴり決意が揺らぐ可能性もあるが、金より愛する君が欲しい。いや大分揺らぎそうな気もするな...俗人とは辛いものである。しかしやっぱりぽちゃさんの方が大事なのだと、無理をしてでもシャウトするのが男ってもんだ。オーイエ。
しかしそれはそれこれはこれ。ぽちゃさんはぽちゃさんとして素晴らしいものだがやはり金も欲しい。
欲しいに決まっているではないか。そこまで嘘を吐くつもりはない。
 横浜ベイスターズの三浦大輔だってFA宣言した。心優しきハマの番長だって悩むのである。こういう事を書くと「三浦さんはそんな人じゃない。カネのためにFAしたわけではない。横浜だって良い条件を提示している。純粋に一選手として選手生活を後悔しないために宣言したんだ」と言い出す方もおられるだろう。私も三浦は嫌いではない。そう思いたい気持ちはわかる。しかしいい歳こいたプロ野球選手が全く頭の片隅の何処にもお金への執着心がなかったらそれはそれでおかしい。ましてや「お金ではない」というのなら、正直今年の三浦は年俸アップするような成績ではない。素直に自分からダウンを球団に申し入れるべきである。それに持病があったからって最高12勝の投手でしょ。メジャーの田口も大概高年俸だが、野球選手はちょっと成功すると大金が手には入っていいですなあ。以上貧乏人の愚痴である。
 で、愚痴はともかく中村紀洋だって中日からFA宣言したが、いいではないか。拾ってやったからって普通のサラリーマン程度の金額で扱き使い、翌年も井上一樹以下の年俸で扱い、しかも来年はレギュラー剥奪の可能性が高いと指揮官に言われてしまっているのだ。確かに近鉄から飛び出しドジャースに全く馴染めずオリックスからも飛び出した頃の暗黒銭野郎ノリなら勝手にその辺で死んでも誰にも同情されないような人種だったが、もうこれだけ頑張ったんだから自由にさせてあげればいいと思う。
勿論私の本音から言えば何億も貰っている人間の心配などしてやる義理はこれっぽっちもないわけだが、貰える立場、求め得る立場にいるのならそれを貰えるよう努力するのは当然とも言える。
私も今と全く同じ内容の仕事をする職場があって、給料が上がるというのなら何も迷わず面接を受けるだろう。当然「全く同じ」という事は有り得ないわけで、結局考えた末今の職場に留まる可能性だってある。しかし取り敢えずは面接を受け、考えてみるぐらいはするはずだ。もう少し日本人はドライになってもいいと思う。
では付き合っているぽちゃさん（仮にA子としよう）を狙っている大企業の御曹司辺りが私に「三億円やるからA子と別れてくれ」と言ってきたらどうするだろう。
 答えは決まっている。NO!である。おととい来やがれバーカなのだ。人間最後は愛である。でもお付き合いが上手くいかずどう考えてももうこれ以上一緒にいられそうにない状態の時にそんな感じの状況が読めていないバカボンが現れたら受け取ってしまうだろう。
「えっ。じゃあ結局A子との愛よりお金を優先するわけじゃないですか。酷いなあ」
「ほっほっほ。お金は受け取るが別れない努力を続ければいいのよ」
「まあ大金が手に入って余裕が出来ればまたお付き合いが上手くいくかも知れませんからね。しかしそれでは御曹司が怒るでしょう」
「知った事かそんな奴。勝手に寄付する方が悪い」
「では、全く別れるつもりがなくても取り敢えず金は受け取る、という事ですね」
「ああ、そういう事になりますな、うん」
ひょっひょっひょ越後屋そちも悪よのうの世界である。
そんなわけで少し訂正しよう。NO!でも、場合によってはYES!でも、取り敢えずそれはそれこれはこれでお金は受け取るという結論に達した。まあ人間そんなものである。
I want both the money and your love.
 「レイン、お前が欲しいーッ！」と叫んだのはドモン・カッシュだが、格闘バカの彼だってお金は嫌いではないはずだ。確かにお金よりはレインの方が大事かも知れないが、お金とシャッフル同盟ならお金の方が大切だろう。仲間だからってお金より大事だとは限らない。何だかそんな気がするんだ兄弟。
金もぽちゃさんの愛も手に入れる。そんな完璧な明日に憧れる私である。当面は愛だ。
やはり愛のある人生は、金はあるけど愛がない人生よりとても素敵だと思うんだ。
えっ？金のない男は眼中にないですって？
あっそ、じゃあねである。
そういう人は死にかけの大金持ちにでも取り入ってお金持ちマダムになればよろしい。私も生活に余裕のない男なので、そんな他人が本当に幸せなのかどうかなど心配してあげる暇はない。
取り敢えず愛が欲しい。
私の望みは、まあそんなところだ。
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