パンとケーキの物語
リストラを進めまくっていたら業務上最低限必要な人員数を下回ってしまい、現在求人募集をかけている我が社である。
この計画性の無さは永井豪漫画のストーリーに通じるものがある。デビルマンみたいな救いようのないラストを迎えやしないかと心配だ。
さてリストラで正社員を削りまくって出来た欠員なので、弊社人事部では更なるコストカットのため、アルバイト社員で穴を埋める事とした。まあ使えない正社員を一人雇う金があったら普通のアルバイトを複数名雇った方が効率的である事は確かだ。そんなわけで人事から採用の要請が来た。 要望はこうだ。 *週三回、拘束一日九時間、月給十万弱、主に夜間勤務 *三十代で長期(年単位)続く、やる気のある真面目な人間。六十代以上の年寄りは基本不可 *正社員、契約社員登用の可能性はゼロ 条件はこれくらいだ。そんなに多くはない(ちなみに「やる気のある真面目な人間」とは「黙々と会社の言う通りに働いてくれる社畜」という意味である)。しかし絶対的に無理がある。やる気のある三十代がこんな条件で満足するわけがない。共働きを望む主婦なら可能性もあるが、出来れば男性を採用したいらしい。なぜ男性希望なのかはよくわからないが、だったら尚更そんな条件でやる気のある真面目な人材が集まるとも思えない。 また、年寄りは駄目なのだが、逆に二十代くらいの若いのもあまり歓迎はしていないようだ。若いと扱い辛いかららしい。要は奉仕精神に溢れた奴隷がご所望なのだろう。馬鹿な話だ。 はっきり言うと、我が社で一番要らないのは本部でデスクにへばり付いている東京本部正職員の皆様だ。十数人いるが、三人で回ると思う。四人もいれば十分だ。皆で分ければ良い仕事を一人一人に振り分けているから十何人分もポストがあるのだ。 とは言っても、実際問題として本部の連中を全員クビにすると言うのも無理があるし、じゃ現場に配置してはどうだろうと言うと、現場としてはあんな連中は要らない。私は本宮ひろしではないのでパンがなければ土粥を食べればいいじゃないとはいかないのである。御免被りたい。 こうなったらもう、ぽちゃさんを採用するしかない。 本部の望む人材が現世に存在しない以上、もっと身近に転がっている女体を活用するべきだ。スバル・サンバーが生産中止になるのなら、三菱ミニキャブも候補に加えれば良い。適材適所だ。
「横綱がいないなら北尾を昇進させればいいじゃない」 「自民党が駄目なら民主党に政権交代すればいいじゃない」 「ジョン・アンダーソンが歌えないならベノワ・ディヴィッドを雇えばいいじゃない」 「Googleが使えないなら百度を使えばいいじゃない」 「雪印がイメージ悪きゃメグミルクを名乗ればいいじゃない」 「マリア様がいなくなったらシャクティを玉座に据えればいいじゃない」 「トルコ風呂が駄目ならソープランドでいいじゃない」 「南京大虐殺がなかったならあった事にすればいいじゃない」 「さやかを救いたかったら魔法少女になればいいじゃない」 「七勝七敗なら星を買っちゃえばいいじゃない」 「ホイットニー・ヒューストンが亡くなったならダウンロード料値上げすればいいじゃない」 「病院に行くのが億劫だから救急車を呼べばいいじゃない」 「助成金が出るのなら原発誘致に賛成じゃない」 「ベノワ・ディヴィッドが歌えないならジョン・ディヴィソンを雇えばいいじゃない」
いもしない、薄給かつ貧弱な待遇に堪え黙々と仕事に励む三十代男性社員を夢想するより、その辺を歩いている身長165センチ体重102キロバスト143センチNカップ24歳のぽちゃさんを迎え入れた方が仕事も楽しく過ごせよう。スマイルスマイルスマイルスマイルスマイルでウルトラハッピー、プリキュアパワーで東映株価も上昇だ。 それにぽちゃさんがいれば職場の雰囲気も明るくなる。少なくとも私はそうだ。能力的に差異があるわけでも無し、女性をもっと有効活用するべきだ。その上でどうせ女性ならぽっちゃりしていた方がギスギスしなくていいだろう。そう考えるとぽちゃさんを採用するしか道は残されていないはずだ。 間の抜けた会社の人事では、しょうもない人材を選んでしまって終わりというのがよくあるパターンだ。しかし私は私のいる職場が阿呆なおっさんの巣窟で終わる事を善しとは出来ない。ぽちゃさんがいい。 ぽちゃさんの可能性に懸けたいのだ。 つまらぬ職場に咲く麗しき花。それこそがぽちゃさんの存在理由だと思うのだが、どうだろう。
|